〜シアワセノシロイショウジョタチ〜

キミと桜の木の下で出逢った

莉玖

 

「志摩子」

薔薇の館、お姉さまが名前を呼ぶ。

心地良くふわりとした私を包みこむような声で…

自分の居場所、自分を必要としてくれる人…今、一緒に笑い合える人がいる。

一緒に悲しんでくれる人がいる。一緒に泣いてくれる人がいる。

それは私にとっても誰かにとっても大切なこと。

敬虔なカトリックを目指す私がいつか一人旅立つ時が来て私はどんな思いを残してしまうだろう。どんな思いに苛まれるだろう。

それでも今は大切にしていたい、大切な人の傍にいさせて欲しい

 

私はその日、桜の木の下で白薔薇さま(ロサギガンティア)こと佐藤聖さまにロザリオを頂いた。

その儀式の意味はリリアン女学園だけが持つ伝統、もっとも親しくかけがえのない二人…姉妹(スール)の証を意味する。

お姉さまが入ってらっしゃる山百合会…薔薇さま方といったら皆の憧れの的…

だけどそんなこと私にとってどうでもいいことだった。佐藤 聖という人物がてくれるだけ…それでよかった。

彼女を心の中で待っていた…のかもしれない

自分と気持を重ねること、自分を必要としてくれること

あの方が傍にいれば私はその身を安心して任せていられる

「私の妹になりなさい」

私が背負ってるものがなんであれ…私が私でいてくれることを望んでくれる

「妹にしてください」

そして私もあなたがあなたでいてくれることを望む

 

 

初めて出逢った日…染井吉野の木々の下で寂しそうに佇む一人の少女…サワサワと揺れる桜にシンクロする姿…ふいにその姿に魅入り、私は時間を忘れそうになってしまった。

トクン

小さく脈打つ。

とたん、強い風が吹き荒れる。自分の長くウェーブのかかった巻き毛がくるくると風に舞う。

桜吹雪…

次第に風が穏やかになっていく…

思わず閉じてしまった目を徐々に開けてく

その前には綺麗なブロンドの髪を揺らす彼女が私を当惑の表情で見つめていた。

「あ…」

声をあげたのは、どちらだっただろう。

ドクン

鼓動が激しく鳴った。

「あなたは……」

そう言われ、慌てる自分、

私はなにをやっていたんだろう

「失礼しました」

頬を赤らめ、お辞儀をし、校舎のほうに逃げてしまった。

 

「桜」…それが私達の出会いだった。

あの時のお姉さまの瞳は憂いを含んでいて桜に溶け込んでしまいそうな美しさ、誰かを寄せ付けない悲しさ…そして危うい儚さがあった。

だからこそ…自分に関った人間の感情に対して敏感で素直に受けられないところはあるが、痛いほどその気持を分かっているのだと感じられる。

 

「志摩子」

「え…あ、はい」

もう一度名前を呼ばれ、やっと現実に引き戻される。

「どうしたの?」

波打つ鼓動を隠し、紅茶をゆっくり含むお姉さまを見て微笑む。

「いえ、それより紅茶のお代わりいれましょうか」

もう少しで紅茶がなくなりそうなお姉さまのカップを見て言う。

「ううん、いいよ」

その様子を見て蓉子さまが口を挟んだ。

「まさか、志摩子が祥子を振って聖の姉妹宣言を受けるなんて大胆なことをするとはね」

そう言って口元をほのかに緩ませる。呆れてるわけじゃない、嫌味でもない

紅薔薇さまは本当に喜んでいる。二人が上手くいってよかった…という感じに…

「すみません」

私はその紅薔薇さまの気持が分かっていて謝った。

紅薔薇さまは優しく微笑み、

「いいのよ、それで」

「祥子さまは…」

「祥子は大丈夫、私の妹だから」

私はホッと胸を撫で下ろす。蓉子さまの表情は穏やか…祥子さまは幸せ者だ

「本人も気付かないでいつのまにかそれが大切だったという気持ちは誰にも言う権利ないでしょう」

「はい」

これだけは譲れません

「あはは、志摩子は正直ね」

そうですね、なんて言って一緒に笑う。

ふいに

「志摩子」

「はい、なんでしょう。お姉さま」

「紅茶入れて」

「あ、はい」

「あらあら、焼もちでも妬いてしまったかしら。聖」

「そんなことあるわけないでしょ」

お姉さまはなんとなく複雑な顔をしながら

「そういうことよくさらっとバカみたいに言えるわね」

「私は本当のことを言ったまでよ」

「ただ、ロザリオ渡しただけじゃない」

「それだけのことが嬉しいって思ってるのはどこの誰かしらね」

「あのね。もーいいわよ」

心なしかお姉さまも嬉しさを隠し切れない様子に見てとれた。

ただ、渡しただけ…その言葉が

私の気持を察してくれる。思わず笑みがこぼれる。

 

あぁ…心からここが好き。お姉さまのいるここが好き。

その想いを胸に

この先、積み重なる出会いと別れは少し胸が痛む思いがする。

だけど一時は荷を下ろし、お姉さまとここにいる人達と笑い合おう…

そして次の絆へと繋がっていく…

 

 

Fin…

 

SSのあとがき…
急に思い立って、あ!書きたいと思ったのがまずこれでした。
ロザリオ受け取った少し後の志摩子さんと聖さま、志摩子さんはまだ初々しく初 めて手にとったもののように書きたかったんです。
そして聖さまはまだぎこちないけ どだ けど 徐々にそれは本当の心地よさだと分かっていくみたいな…
文章能力なくてすんません、 だけど中の想いが伝わってくれると嬉しいです^^

 


    

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